1000種超す箱 時代に呼応
数センチから1メートル以上まで選手類を超えるきり箱は、全て10人の職人がオーダーメイドで手掛ける。
百貨店の商品券や宝石を収める箱は気密性と美しさが命。隙間なく板を組み合わせ、角はかんなで丸く仕上げる。
きり箱作りは江戸期、きりだんすやきりげたの端材で船沈を製造したのが端緒とされる。1868年創業。関西などから着物の箱をを受注して顧客を広げた。キリの強みは木目の美しさや湿気への強さ。福山市鞆町の特産保命酒や勲章用にも用途は広がった。
「求められるものを作ってきただけ」と、7代目の浦上利平会長(81)は謙遜する。戦後、「置き薬」が最盛期を迎えると薬箱、高度成長期に婚姻が増えると結納箱を柱とし、社会に合わせたものづくりを続けてきた。
平成以降、技術力で安価な中国製が押し寄せる時代に立ち向かう。職人はいずれも経験20〜50年ほどのベテラン。「どんな箱でもいいあんばいでピタリと収まる」技術が信頼され、80年以上取引する会社もある。
2017年からはJR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」の備品のきり箱を製造する。浦上会長は「時代に求められるものを削り出す」と、役割を受け止める。